「もしかしたら(家に帰れるのは) 最後になるかもしれないから」
そう母に促されるまま、数か月に渡る入院療養中の
父の一時帰宅に合わせて帰省した。
「お帰りなさい、お父さん(笑)」
両脇を家族に抱きかかえられながらお目見えした
すっかり痩せ細り、白い顔をした父は
「ああ・・」といった表情で薄ら、笑顔を見せた。
数時間の外出許可だったがーーこれといって、無難で
何も特別な事もなく、普段通り物静かに過ごす父。
庭を眺め、TVの前に腰掛け・・こっくり、こっくり、うたた寝。
お昼ごはんに皆で食卓を囲み、ゆっくり食べ物を口に運んで
いつものように、終始目を瞑ったまま咀嚼を繰り返し・・終えると
「泊めて(寝かしての意)くれないかね」そう言って
介助されて、医療用ベッドへ横たわったものの・・
いつも(病院)のベッドと違い、寝心地イマイチで寝付けず
起き上がろうと度々頭を持ち上げては、もぞもぞもぞもぞ・・
それじゃあ、とごはんまで座っていた安楽椅子に腰掛るも
やはり落ち着かずに再び、もとの医療用ベッドへーー。
そうこうしているうち、病院へ戻る時間が来て
母にやんわり諭され、促されるまま
「うん、うん(そうだね)」同意するよう頷くと
来た時と同じように、両脇を抱えられながら
迎えたタクシーに乗り込み、病院へ帰っていった。
この際だからーー?“何かをしよう”との想いも湧かず
父の様子を終始、ただそれとなく見ていた。
外見は随分と絞られ、それなりの苦労もある。けれども
何より、今の状況、現状をあるがまま受け止め
淡々、黙々と「生きている」といった様子からは
少なくともただ「生かされている」感じはなく
毅然として、堂々たる存在感があり、
御歳九十を越えてなお、肌艶もある辺りは。さすが。
“センテナリアン(百歳)”を目指すーーか(感服)。
「天寿をまっとうする」その生きる意欲こそあれーー
今生への執着はできるだけ削ぎ落されてこそ、先ゆき明るく
幸福なわけで、真の幸福は金で買えず、金に換えられない。
母から連絡を受けた当初ーー
「(父は)心配ない」と思っていた通り
その前向きな直向きさ、少々融通の利かないくらい
一所懸命な生き様にーー改めて、ささやかな敬意と称讃と
「大丈夫(だから)」の想いを送るーー
意識のほんの片隅にーー
威風堂々たる先代を見舞った
その様子が薄ら。。僅かに重なって見えた
ごめんなさい
ありがとうございます
愛しています